モロコの皮の引き方は2種類。
皮の下のゼラチン質の旨さを生かすには、表面の皮ごとウロコを剥き取る。
もうひとつは普通の魚のウロコを取るようにウロコ引きでウロコだけを削ぐ。
好みで選べば良いだろう。
鋸を持ち出したり、出刃の峯を木槌で叩いたりする人があるようだが、まっとうとはいえない。
大きめの出刃を良く研いで使えば、どんな大きなモロコでもおろすことができる。
塩をたっぷりまぶし、タワシで良くこすってヌメリを取り除いたら、
上記の方法のどちらかでウロコを取るのがまず最初の作業。
カマ下に包丁を入れ、普通の魚と同じように3枚におろす。
大きすぎて大変だという人は5枚におろしても良いが、
背はともかく腹はやわらかくて手ごたえがないのでおろしにくい。
骨を切るときは出刃の元の部分を使い、
一気に勢い良く振り下ろして加速度を活用する。
一番太い中骨は、関節と関節の間に刃を入れるのがコツ。
関節に打ち込んだら刃こぼれを招くだけで、跳ね返ってしまう。
難しいのは頭。
出刃の元の部分を何度か振り下ろして切り分けるのだが、
素手だと骨に当たって怪我をすることがある。
軍手をはめてさばくのが無難だ。
巨体だが薄造りが良い。
脂の乗った腹身だけでなく、さっぱりした背身も抜群。ポン酢しょうゆに紅葉おろしがしっくりする。
スダチがあればなおうれしい。
削ぎ切りした刺身を、酒と醤油を混ぜた液で漬け込む。
ワサビ、和芥子、おろしにんにくなどを加え、万能葱を5cmほどに切って一緒に漬け込む。
本来はカツオで付けるのが一番だが、白身のモロコもなかなかいける。
あまりしょっぱくないように味付け、ワサビと芥子はたっぷり入れるほうがコクが出る。
できるだけ大きな鍋で水炊きをすると良い。
20s級のモロコだったら、ほかに刺身に切ったとしても、20人や30人では到底食べきれるものではない。
本当は味噌仕立てが旨いのだが、味付きの鍋だと、量が多すぎて飽きてしまう。
水炊きなら最初はポン酢しょうゆ、次はゴマだれや味噌だれなどと味の変化を楽しむことができるというものだ。
旨い鍋を仕上げるコツはアラを煮込んでだしをしっかりとること。
とくに中骨を刻んで、髄液をだしにしないと、モロコの本来の味は出てこない。
皮や内蔵の皮膜、中落ちの膜、胃袋や肝臓などは必ず一緒に煮込んで食べること。
これらが一番旨いところだから、決して捨てたりしないでいただきたい。
刻んだ頭の部分などは細かいウロコが取りきれず、
またアラに血糊などがこびりついていたりするとせっかくの料理が台無しになってしまう。
そんなときはいったん湯引きしてから洗い流すときれいになるから、それから煮込むと良い。
水炊きは文字通り水で煮込むが、酒をたっぷり使うとコクが出る。
味噌仕立ての場合は味噌を酒で溶いて味付けし、
仕上げに大根おろしを入れてひと煮立てすると、抜群の味が醸し出される。