土曜日、恵津丸からベニアコウに出ました。
梅雨の晴れ間のような1日でしたが、開始当初はかなり波っ気がありました。
船頭は潮と風が逆だからやりにくいとこぼしていましたが、心配していたほど潮は速くありません。。でもきっとそのせいなのでしょう。思うようには食ってくれません。とはいえ幻といわれるほどのベニアコウですから仕方ありません。
最後の流しの4投目。タハラッチのキングバイパーの穂先がごくわずかだけもたれこんだような気がしました。
仕掛けの降下中、トモ寄りの半数の人たちのラインが舵に引っかかるトラブルがあり、その解消に釣り座を離れていましたので、底ダチは中川さんが取ってくれたのです。
1000mラインを狙っているのに、道糸の出は900mまで達していません。丹念に底を取り直して、結果的には100m以上も送り出していた最中のことです。
最後の流しだけに船頭も時間をかけてくれたようです。でもまだ波っ気は残っていましたから、ミヨシの釣り座はかなり揺れています。身体を支えながらていねいに底を探っていったというわけですが、この鈍いアタリに自信を持つことなどは到底できません。
やがて巻き上げ合図。いっせいに電動リールのモーターが唸りを上げます。
9本のタックル中7本がマリンパワー3000ですから、静寂を乱しているのは某社の2台のリールだけ。静かで力強い巻上げが開始されました。
タハラッチの竿には今まで以上の負荷がかかっています。
慎重にドラグを調整し、巻き上げスピードも抑えます。
道糸をたっぷり送り込んでいるので、ひょっとすると根掛かりかもしれません。
魚が付いているとき、無理に根起こしするとそのショックで外れることがあります。少しずつドラグを締め、低速で巻き上げて糸ふけを取るように操作するのです。
根掛かりの懸念をよそに、道糸は重い負荷がかかったまま少しずつ巻き上がってきます。何かがついているのは間違いありません。
最初の底ダチ深度まで巻き上がったのでドラグをゆるめ、スピードを上げます。
マリンパワーの直前で道糸を掴んだとき、さほど力を入れなくても止まるくらいのドラグテンションが深場釣りの際の巻上げの基本。締め込んでしまったらさまざまなトラブルに見舞われることが多いのです。
このときのスピードは16。普段は18から20で、空っぽを確信したときは24くらいまでスピードアップしますから、とても慎重だったのは間違いありません。
「これで黒いヤツだったらカッコつかないね」
隣の中川さんと笑いながら話しましたが、8人目が巻上げを終了した時点でまだ180mほど残っています。
いくらか巻上げが軽くなったようですからドラグを1クリックゆるめ、スピードを18にアップ。みんなの注目する中で巻上げが完了しました。
仕掛けは少し沖へ出ているような気がしますが、まだほとんど垂直方向。手繰り始めると幹糸がだんだん沖へと角度を付けて遠のいていき、心がウキウキしてきます。
600号の鉛を含めて重い負荷を浮き上げているのですから、間違いなく魚が付いているのです。
手繰るにつれて仕掛けはどんどん浮き上がります。これだけの浮力ですから期待度も加速して膨らんでいきます。懸命に手繰っているタハラッチにはその先の様子はわかりませんが、やがて「浮いたぞ」という叫び声に顔がほころんできます。
目を上げると、数10m沖の海面に真っ赤な大きな塊がぽっかりと飛び出しました。
さすが名船頭です。必ずしも状況が良かったわけではありませんが、最後の土壇場でベニアコウの住処を見つけてくれました。
おかげさまで今季最後のベニアコウ釣行を6sで締めることができました。
ちなみに仕掛けは舳会流の15本バリで、エサは恵津丸流。この回だけ水中ランプをつけましたが、食っていたのは下から3本目のハリでした。